怖い思いは
私を揺らす。
World Loves
あれから、奈江のお通夜・告別式と終わり、別れをした。
最初で最期の一緒にたったステージ。
なんで?あの時は、私と一緒に笑ってて・・・
終わったら急に・・・
「菜香・・・。」
「優利ィ・・・秋絵ちゃん・・・・。」
涙はとめどなく流れる。
「仁ッ!」
「んで、奈江が死んでるんだよっ?!」
あれは・・・奈江が入院してた時に来た・・・・。
荒崎 仁【あらさき じん】さん・・・。
奈江のマネージャーであり、恋人であった人。
「・・・菜香・・さんだよな?」
「・・・はい、仁さん。」
奈江から聞いていたとおり。
澄んだ瞳・・・拒むような目・・・
「悪かったな。アイツが・・いろいろと・・・。」
「・・・いえ。楽しかったですから・・・問題ありません。
あの日、ステージに立てたのも・・・一緒に歌えたのも・・・奈江がいたからです。
こっちが・・・お礼を言わなければなりませんよ。」
そんなに・・・頭を下げないでください。
恋人を・・・大切な人を亡くした人のこと・・よく・・・わかるから・・・。
「もし・・・続けてくれるのなら、頼む、歌を続けてくれないか?」
「・・・彼女のためにも・・・私のためにも・・歌います。私は。」
「サンキュウ。俺のことは仁で良い。同い年だからな。」
「・・えっ?!」
「聞いてないのか?同い年だ。敬語も使うことねぇだろ?」
「・・うん、仁。」
ここで別れる。
仁・・。
『仁・・・父親、母親失っているんだ・・。人に殺されて・・。
犯人、わからなくて・・・人見知りとかしやすいけど・・・菜香ちゃんのことは・・・理解してくれているみたいだから・・・。
仲良く・・してやってね。』
そういったのは・・・この時のためだった?
長くないって知っていた?
私は・・・・いつになったら死ぬんだろう・・・。
もうそろそろ・・・考えないといけないのかな・・・。
「菜香、帰るぞ。」
「うん。」
また・・・死について・・・考えてしまう。
今、頭によぎっているのは・・遺書の内容だったりする。
末期かもね・・・私。
「菜香、今日は俺んち来い。1人じゃなにすっかわからねぇしな。」
「・・・ありがとう・・・。」
1人じゃ・・・苦しかったし・・・怖かったと思う。
「じゃぁ・・・私、ここで帰るね。バイバイ。」
そう言って、私たちが進もうとする道と違う道へ行く秋絵ちゃん。
“バイバイ”という言葉が・・本当に最後の言葉のように聞こえた。
私をおいていくの?みんな・・・私から離れるの?
「菜香・・・?どうした菜香?!」
涙が止まらない、あふれて・・止まることも枯れることも知らない涙。
「ふっ・・・ふぇっ・・・ひっくひっく。」
「菜香・・・・。」
人がいない中・・・抱きしめてくれる優利。
とめどなく流れる。
有利が居ていくれなかったら・・・私は泣けなかったと思う。
「菜香・・・お前は生きろ・・死んじゃいけねぇ・・・。
奈江さんのマネージャーみたいに・・悲しむ奴がたくさん居る。
つらい事とかあるなら俺だけでも良い、言え。良いか?
お前は・・・生きろ・・・。」
コクリとうなずく私。
涙をぬぐってくれる優利。
優利が言ってくれること・・・痛いほどわかる。
でもね?私の命は延ばしているだけ・・・病気を治すことなんてできないんだよ?
生きたい・・いつまでも生きたい・・・優利と一緒にいたい・・・。
それを願うことさえも・・・許されないんだよ?