落ちる
囁く
World Loves
いつまで泣いていても、病気が治るわけじゃない。
だったら・・・・歌おう・・・
悲しみを・・少しでも・・・減らせれば良いな・・・。
あの青空へ とんでいければ良いな
あの日あの場所で君と出会い 愛する
それもそうやって過去へなっていく
こんな現実も夢だと思っていくんだね
「・・・どうしてかな〜??暗いよね、私。」
窓から外のグランドを見る。
カレが仕切っている。
なんせ、サッカー部のキャプテンだし。
嫌な顔なんて1つも零さない、むしろ怒られても・・・笑っている彼だから・・・。
いつか・・・笑顔を零さない日が来るんじゃないかと・・・心配で。
ガラガラ・・・
「あっ、内名さん。・・・あっ!ここ、使ってた・・?」
「えっ?良いよ。クラリネットの練習?」
「まぁねッ★」
瀬川さんは、吹奏楽部の副部長さんで・・・とてもクラリネットが上手いっていっつも聞く。
私が、彼女の音を聞いても奇麗と思ってしまう。
素人だし・・・なんせ、ギターしか分からないから。
「内名さんも、吹奏楽、入れば良いのに・・。」
「いや、私はギターだけで良い。多くは望めないよ。」
本当に・・・ギターと歌さえあれば・・・。
私は、それで良い・・・。
それ以上、望んだら、私は・・・。
「内名さんは・・・もっと言ったほうが良いと思うよ?」
「えっ・・・?」
「もっと、う〜ん・・・なんて言えば良いんだろう・・?
病気とかで・・・そんなに苦しんでいるのだったら・・言って欲しいな・・・って思うよ。」
「優しくしなくて良いよ・・・・どうせ私は・・・・
ペチッ!!
「なんでそんな事言うの?!それで、悲しむ人だってたくさん・・・・
たくさん・・・いるはずよ?」
頬が痛い。
でも、それ以上に、心が痛い。
「瀬川さん・・・1つ聞いて良い?」
「・・・何?」
「・・・もし・・・もしよ?私が死んだら・・
私を・・忘れる?」
いつも考えて・・・怖くて・・・不安でいっぱいで・・・。
「そんな訳ないッ!少なくとも私は、内名さんのこと、忘れないッ!!」
瀬川さんの声は、心の奥底に届いた。というか、響いた。
暖かくて・・・本当に・・・心のそこから言ってくれているんだと・・・思う。
「あり・・・がとう。」
ありがとう・・・彼女だけでも・・・覚えていてくれるのなら・・・・
私は、幸せなのかもしれない・・・。
「ねぇ!私、ずっと前から言ってみたかったことがあるの!」
「なに・・?」
「“菜香”!」
「えっ・・・?」
「ダメかな?なんか、苗字ってかたっくるしくて・・・嫌いなのよ。友達なのにね?」
彼女は、こう言ってくれいる
『友達だから、名前でよんで。』
「いいよッ!!」
嬉しかった・・。本当に・・・・。
「・・・菜香。アホだろ、お前。」
ドアの前で、ずっとカレが聞いていた事は知らず・・・。
「私も名前で!」
「・・・秋絵ちゃん。」
「う〜ん・・・呼び捨ての方が嬉しいけど・・・まぁ、良いやッ!秋絵ちゃんで!
って・・・ヤバイッ!!合奏の時間だッ!!!」
「菜香!ゴメンねッ!」
「頑張って!秋絵ちゃん!」
ガラガラガラ・・・・
「(盗み聞きは男としては最低だけど、これは仕方がないから菜香には言わないでおいてあげる。)」
「んなッ!?」
「優利?いるの?」
「あ・・あぁ。かえろーぜ。」
「うん。ギターしまうからちょっと・・・「あっ、お前の歌聞いてみてぇ。」
「・・・・イ ヤ!」
「・・・・ケチな奴。」
「いつか聞かせてあげる。」
必ず・・・トップスターになって・・・世界をとどろかせるの・・。
「さーて、何奢ってもらおうかな。」
「・・・から・・・「ん・・?」
「昔っから好きだった、あのアイスクリームでどう?」
「・・あぁ、良いなそれ。最近行ってねぇから・・・久々に食いたいな。」
「よし、行こう。」
私たちの家の近くに小学3年の頃、アイスクリーム屋と駄菓子屋がひっついたような店ができた。
家の近くにそういうものがなかったからか、私たちはよくアイスクリームを食べに行ってた。
そこのおばあちゃんはとても優しい人で、良くアイスクリームをただでくれた。
駄菓子も・・・欲しいもの何でもくれて・・・・
小学校5年生までは、宝箱のようなところだった。
「あっ・・・まだあるね。」
「近くに家があんのに、こことおらねぇからな・・・。」
「行ってみよ。」
「いらっしゃい。」
変わらず座っているあのおばあちゃん。
おばあちゃんは、覚えているのか分からないけど・・・。
「おや・・・お嬢ちゃんたち・・・小さい頃、良く来てた子だね〜??」
「は・・・・はいっ。覚えていますか?」
「そりゃーね。私の孫みたいな子たちだったからね〜・・・忘れはしないよ。」
孫・・・家族みたいな・・・
「・・・良かったな、菜香。俺たちのこと・・・・。菜香?」
「有難う・・・おばあちゃん。」
「・・・菜香。」
「じゃぁ・・・今日は何のアイスクリームにするか?バニラ?チョコ?」
「・・・私いつもの!!」
覚えているかな・・・?
「あぁ〜・・・ミックスか。坊やも・・ミックスだったね〜。ちょっとまちんせーよ。」
「記憶力良いな。なんか、嬉しいな、菜香。」
「うん。嬉しい。」
私は、幸せ者だね・・・。
「ほら、これだね?」
「うんっ!」
「・・・・食べながら帰って落とすんじゃないよ。」
「はいっ!」
「また来てね。」
「また来ます!」
片手にアイスクリーム持って、家へ向かう。
「お金・・・良かったかな・・?」
「今度、払いに行こうぜ。」
「うん・・・あっ!愛羅!愛羅、引き取りに行くわ。」
「あぁ〜、そうだな。愛羅連れて行ってくれねーとな。」
「愛羅を毛嫌いしないでくれます?」
「いや、愛羅は好きだぜ?でもな、あいついっつも5分に一回はお前の名前が出るんだ。
だから、早く引き取ってくれねーと・・・。」
「・・分かってる。」
愛羅は私の妹。
小学3年生で・・父親も、母親の顔すら・・・覚えていない。
私が、母親の代わりをしないといけないんだけど・・・・入院している時にはそうは行かなくて・・・。
優利の家にお邪魔させている。
「おっ!菜香ちゃん!」
「あっ!!」「ゲッ・・・・!」
「風利くん!「クソ兄貴・・・ッ!」
「はーい。変な口を聞くのはこの口かァー?!」
風利くんは、高校2年生。
とても、頭が良くて、勉強も時々教えてもらう。
風利くんと、優利は良く似ている。
さすが、兄弟だねって言うくらい。
「菜香ちゃん、愛羅ちゃん?」
「あっ、うん。そうだよ。」
「じゃぁ、3人で帰ろうか。コイツ絞めるついでに。」
「やめろ!触れるな!腐るだろーが!!!」
「あっ・・・優利、その言葉ヒドーイ。」
「ほれみろ。菜香ちゃんもヒドイって言ったぞ?やめた方が良いぞー?」
「・・・ウルセエ。どっか行け。」
兄弟げんかの原因はいつも優利が風利くんへ言う言葉から。
「という間についたよ?二人とも・・・って!!」
「うるせえッ!ほっとけ!!」
「てめぇ!お兄ちゃんに向かって何言ってやがる!」
「てめぇなんかどっかいっちまえ!!」
「ちょっと2人とも、やめてよッ!!」
まぁ、家の前に誰もいなかったのが不幸中の幸いだったのか・・・。
「兄貴なんかほっといていくぞ、菜香。」
「ウン。」
ガチャ
「ただいまー。」
「おじゃましまーす。」
「おーいっ!愛羅ッ!!菜香が来たぞ!!」
「・・愛羅、いるの?」
「あぁ、靴あるしな。」
ドタドタドタ・・・・
階段からひょっこりと顔を出したのは
「お姉ちゃんッ!!!」
「あ〜いら★」
寂しがり屋の愛羅。
「お姉ちゃ〜ん・・・。」
「ほら、泣かない。」
「ひっく・・・ひっくふぇ・・・。」
妹の顔を見るのは何ヶ月ぶりだろうか・・・。
病院にはきちゃいけないと言っているからだろうけど・・・・
大きく・・・なったな〜・・・。
「愛羅、お家に帰る準備してきて。帰ろう。」
「ウンッ!!」
そう言ったら、すぐに階段上ってガサガサと言う物音がし始めた。
「よっぽど嬉しいんだな。愛羅。」
「そうだと良いな。」
歌もギターも全て・・・欲しいの。
でも、望んではダメ。
みんなを・・・悲しませないために・・・
ギターと歌さえ、あればそれで良い。