潰す
零れる
World Loves
旅は続くの。
ドナーが見つからない限り、生きることがもうあと残りわずかな私。
もう・・・一生・・・続くんだと、分かってはいるのにね。
「お姉ちゃん!朝だよッ!!」
・・・愛羅・・・。
「・・・・・・。」
・・・声が・・・・でない??
「お姉ちゃん?」
「あ・・・愛羅、おはよう。」
「うん。・・・・どうしたの?顔色悪いよ?」
「あぁ、大丈夫。学校行く準備するね。」
「う・・・うん。」
・・・なんだったの・・・?金縛りを受けたように・・・のどが重くて・・・
声が・・・でなかった・・・?
「お姉ちゃん、顔色悪いから、帰る時、病院行ってきてね。」
「・・・わかった。愛羅、私が帰るまで優利の家にいなさい。」
「えっ?一人で・・「お願い。愛羅。」
「うん。わかった。」
もしかしたら・・・私って・・・危ないのかな?
机の引き出しの中の・・・私が書いた遺書。
本当は・・・わかっているんだと思うの。
私がいなくなったら、誰かが悲しみ、誰かが途方に暮れて・・・
私を思いだしては、苦しみ、泣き、心の傷をつける。
私は、死んでしまったら、誰かの傷になるんだろう。
忘れて欲しくはない・・・前に、秋絵ちゃんに・・・
≪忘れないで≫と、訴えかけてしまった。
多分・・・優利にも、そういってしまう日が来る。
「お姉ちゃん、優利くんが来たよ。」
「ウン。じゃぁ、行ってくるから、鍵は「おばさんに預ければ良いんでしょ?」
「そうよ。じゃぁ、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
ーーーー
「おはよ。」 「おう。」
何も言わなくても、必ず毎朝、私を迎えに来る優利。
他愛のないことかもしれないけど・・・私にはそれが嬉しい。
「・・・菜香。もう、入院とかしねぇよな?」
「へ・・・・?」
「あっ・・・いや・・・。気にしないでくれ。」
あぁやって・・・私を大切にしてくれてるんだってことも分かる。
たとえ・・・恋人じゃなくても・・・そうやってくれている。
「・・・わからないけど、今のところは。」
「・・・不安があるんだったら・・・嫌なこととか・・・あるんだったら、言えよ?」
「・・・う・・うん。」
言い出しそうになる。
≪もし、死んでも忘れないで≫と・・・。
イコール、≪傷ついて≫といっているのと同じことを・・・・。
「今は、大丈夫だからね。心配しないで。」
大丈夫・・・大丈夫・・・
大丈夫・・・だから、優しくしなくて良い。
いつか、それに甘えて、言葉に出しそうになる。
≪私は・・・長くない・・・≫と。
「・・・・なんか、顔色悪いぞ・・菜香。」
「え・・・・?だい・・・・
・・・また・・声が出ない。
息が・・・できない・・・・。
「菜香?!」
苦しい・・・息が・・・のどが潰されてるように・・・。
「菜香ッ!!」
愛する人よ 私に涙を流さないで
その涙は私にはもったいない
まだ私は大丈夫
生きる希望は・・・道しるべは・・・ここにある。
だから、まだお別れじゃないから・・・涙を零さないで・・・。