届かない
あの空へ
World Loves
「菜香・・・大丈夫か・?」
「・・・病院・・。」
私・・・そうだ、のどが潰されそうになって・・・・息苦しくなって・・・倒れて・・・・。
「あっ・・・学校・・。」
「大丈夫だ。先生には言っておいた。」
「優利は?!」
「午前中は行ってきた。」
「・・・ゴメン・・・。」
「気にするな!ホラ、寝とけ。少し、入院だとよ。」
「わかった。アリガト・・・。」
寝るのは嫌じゃない、むしろ好き。
でも、ここは病院。
彼は帰らないといけない。
学校にも一緒に行けない・・。
あ・・・愛羅。愛羅は・・・・。
また、愛羅を一人にする・・・・。
そう思うと、私は寝れなかった。
「・・・・ギター・・と。」
病院のベットの下においておいた自分のギター。
持って、懐かしむように弾く。
「はーい、今日はReadYouの人たちが来てくれましたー!!」
「こんばんわ〜。」
・・・テレビ?
あっ・・・Read You。
歌恵さんの歌、奇麗で・・・。
「歌恵、大丈夫か?」
「うん。2・3日入院だって。」
・・・誰だろ・・・?
「菜香ちゃん。ここに1人入れても良いかな?」
「えっ・・?か・・構いませんけど・・・。」
本当は嫌だった・・・・。せっかく曲が作れる唯一の場所だから。
でも、次の瞬間、私はそう思わなくなった。
「・・・ごめんねぇ・・・ゴホッゴホ・・・。」
Read Youの・・・歌恵さん・・・。
「あっ・・・・私が出た番組・・・。今日放送だったのね。」
「おい、歌恵。寝とけ。」
「分かってるわよ。仁【じん】。」
・・・すごい・・・・奇麗な人
「仁、もう良いから、帰ったほうが良いわ。」
「だけど・「大丈夫よ。」
「あぁ、じゃぁ、明日来る。」
バタン・・・
「ゴメンね、驚かせて。」
「あっ・・・別に、気にしてないです。」
「それ私が出てた番組だよね。」
「はい。」
「私が好き?」
「はいっ!というよりは、私の憧れです!!」
「私が・・憧れ?」
「私も、貴女のように歌いたいです。ギター弾きたいです。」
「・・・名前、なんていうのかな?教えてくれない?」
「・・・内名 菜香です。」
「そう。・・・ギター、持っているのね。」
「はい。」
「貸してもらっても良いかな?」
「どうぞ。」
歌恵さんが私のギターを持った瞬間、世界が変わったような気がする。
どう言えば良いのか・・・。
とにかく、雰囲気からして、私と違う。
会いたくて 会えなくて
心が痛くなって
風が私を
慰めてくれる
疲れてためんどくさそうに来たキミ
顔にださないようにしてくれてたけど
私には分かるの あなたのこと
声に出しているように 手に取るように分かる
会いたいけど会えない
君の苦しい顔見たくない
風が私を強くしてくれる
「・・・feel you・・。」
「・・・知っているのね。」
「・・・ハイ。」
「・・・・苦しそうな顔。嫌な曲だったかしら?」
「いえっ!そんなことありません。違うんです。
私に・・・似ている曲だったんで・・。」
「ん?・・・辛いことがあったの?」
「私、ドナーが見つからない限り、治らないんです。」
「どんな病気?」
「・・・よくわからないんです。多分、母親の体の弱さと関連があるんだと思うんですけど・・・。」
「そう・・・・。ねぇ、1つ歌ってみて!ね?」
「えっ・・・そんな、見苦しい歌を・・・「そんな訳ないわ。
歌が好きなら・・・そんなことないわ。」
「・・・ほら。ギターを持って!」
返されたギター。
何から歌うか・・・。
と言ってもそこまで多くはない。
外の青空 いつもみていた
外歩く人 羨ましくて
家の中で 太陽の光を浴びていた
青空見れば 雲ひとつなく
雨が降ってやんで
空見上げれば 虹か架かり
七色の架け橋の上 渡ってみたいな
「・・・・すごいじゃない・・!」
「・・・そんな、恐縮です。」
「・・・ねぇ!1曲だけ、私に書かせてくれないかな?」
「えっ・・・?」
「私、これでも作詞もしてるのよ?今、菜香ちゃんの歌声にほれたの!
ねぇ、書かせてくれないかな?」
ウソ・・・??夢?現実だよね・・・・?
「嬉しいです・・・是非、お願いします!!」
病院で嬉しいことなんて・・・あっても良いのだろうか?
私の憧れの人が隣にいて、私の作詞をしてくれるといって・・・・
でも・・・歌恵さんは・・・どうしてここへ??
「あっ、菜香ちゃんに私の本名、教えておかなきゃね。」
「へ・・?」
「奈江。荒山 奈江【あらやま なえ】って言うの。
人が大勢いるときはあまり本名言わないでね。
でも、病院とか、外で見かけたときは奈江って呼んでね。」
「はい!」
「3日間だけだと思うけど、よろしくね。」
「はい!」
「普通にして?敬語は嫌いなの。」
「うん!わかった。」
「よし、今日はもう寝よう!!」
「そうだね。寝よう!」
空を見上げれば 星が輝いて
笑顔になっている私を照らし
月が暗い闇を照らし
私たちを映し出す
死ぬのは近い、星が異様に私を照らす。
でも、まだ死ねないよ。
まだ・・・・歌を・・・・歌いたいから・・・。